スペインカンゾウ培養細胞にメチルジャスモン酸を投与すると、サポニン生合成に関与する酵素群のmRNAレベルが上昇し、サポニン含量が顕著に上昇した。一方、その培養細胞にジベレリンや酵母エキスを投与すると、サポニン生合成が阻害され、生合成酵素のmRNAレベルが低下した。サポニン生合成の後半に位置する酸化酵素や配糖化酵素は未だクローニングされていないが、これまでにクローニングされたサポニン生合成酵素遺伝子と協調的に発現していると期待される。そこで、これらの遺伝子のクローニングのための実験材料としてスペインカンゾウと同じマメ科のモデル植物であるミヤコグサを用いることとした。最初に、ミヤコグサから培養細胞を誘導し、サポニン生合成の前半部分の酵素群のmRNAレベルとサポニン含量がメチルジャスモン酸により上昇することを明らかにした。次に、かずさDNA研究所から一般に公開されているミヤコグサの約40種類のシトクロムP450のESTクローンを入手し、その中からノーザン分析によりメチルジャスモン酸でそのmRNAレベルが上昇するクローンを検索し、4つのシトクロムP450のESTクローンがメチルジャスモン酸誘導性であることを発見した。現在、これらの遺伝子の酵母発現べクターを作成し、酵母中に発現させてその酵素機能を解析中である。また、スペインカンゾウからクローニングしたβ-アミリン合成酵素とヘチマからクローニングされたイソマルチフロレノール合成酵素に関して、植物に形質転換するためのベクターを作成し、カンゾウ培養細胞への遺伝子導入を試みたが、成分含量の変化が顕著な形質転換体は得られなかった。今後さらに再検討していく予定である。
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