研究概要 |
1.ブラジル産薬用植物Aniba gardneriの成分とその生物活性について クスノキ科(Lauraceae)に属する本植物(現地名;CANELLA SASSAFRAS)の樹皮は,現地においてリューマチや神経痛などの治療に用いられている。本植物樹皮中に含まれる抗アレルギー成分の解明を目的として,エタノール抽出物について成分検索および生物活性の検討を行った。マスト(肥満)細胞のモデルとなるラット好塩基球白血病細胞(RBL-2H3)を用い,ロイコトリエンC4および脱顆粒に伴うβ-ヘキソサミニダーゼの遊離阻害活性を指標に,HP-20カラムクロマト,シリカゲルカラムクロマト,順相・逆相HPLCによる精製を試みた。その結果,^1H,^<13>C-NMRやMSスペクトル等を詳細に解析することにより24種のネオリグナンおよび9種のセスキテルペンを単離・構造決定することができた。このうち13種は新規化合物であった。これらの化合物のうち,本エキスの主成分の一つであったferrearinタイプのネオリグナンおよび分子内にジエノン構造を有するネオリグナンにポジティブコントロール(テルフェナジン)と同等の阻害活性が認められた。このようなネオリグナン類に抗アレルギー作用を示す報告はなく,また,本植物の抗アレルギー作用を示す成分の一つがこれらのネオリグナン類であることが明らかとなった。 2.ブラジル産薬用植物Bumelia sartorumの成分とその生物活性について ブラジルのカーチンガといわれる乾燥地帯に自生する本植物(現地名;QUIXABEIRA)は,アカテツ科(Sapotaceae)に属し,その樹皮を現地では収斂,強壮,糖尿病の治療に用いている。本植物の成分研究に関する報告はなく,生物活性成分の探索を目的に研究を行った。本植物樹皮の70%エタノール抽出物について,常法に従い成分の精製を試み,構造を解析した結果,本エキスの主成分であった4種のオレアナン型トリテルペン配糖体(サポニン)の他に,6種のトリテルペン,各1種のステロイド配糖体およびアミノ酸誘導体をそれぞれ単離・構造決定することができた。このうち新規化合物はセコホパン型トリテルペン1種であり,分子内にカルボニル基を3つ有するというユニークな構造であった。さらに,単離された化合物についてヒト前骨髄性白血病細胞(HL-60)およびヒト末梢血単核細胞(PBL)に対する細胞増殖活性試験を検討したところ,新規化合物にはガン細胞であるHL-60の増殖を抑制し,かつ免疫担当細胞であるPBLの細胞を増殖させるという興味ある知見を得ることができた。新規化合物の構造の特徴と生物活性の関係については今後の課題である。
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