本研究は、分子認識部位への標的分子の結合がトリガーとなり触媒部位が活性化される、情報変換・増幅型の人工レセプターを構築することを自的としている。本年度は、架橋可能な直鎖状高分子(プレポリマー)を用いる新規モレキュラーインプリンティング法により分子認識能を有する人工レセプターポリマーの設計・合成を行い、1)〜2)に示すように、本手法が標的分子応答性をもつ人工酵素ポリマーの構築に有用であることを明らかにした。 1)プレポリマーを用いるモレキュラーインプリンティング 重合可能な官能基(α-ビニルベンジル基など)をポリメタクリル酸に導入し、プレポリマーを調製した。モデル標的分子(シンコニジン)とプレポリマーを混合して、標的分子・プレポリマー間に相互作用のある状態を保ち、プレポリマーを架橋した後にポリマー内からシンコニジンを抽出することにより、人工レセプターポリマーを合成した。高速液体クロマトグラフィーにより人工レセプターポリマーの結合能を評価したところ、シンコニジンに対して選択的な結合能を獲得していることがわかった。また、そのシンコニジンとの結合定数は約10^5M^<-1>と見積もられた。さらに、ポリメタクリル酸に導入するビニル基の密度が、得られる人工レセプターポリマーの選択性に大きな影響を与えることが明らかとなった。 2)標的分子に対して応答する人工レセプターの合成 プレポリマーにポルフィリン金属錯体を導入し、配位結合によるリガンド結合及びその分光学的検出を可能とすることを検討した。β位にヒドロキシフェニル基をもつTPP型ポルフィリン亜鉛錯体を調製し、これをエスチル化反応によってポリメタクリル酸に結合させた。さらにビニル基を導入し、得られたプレポリマーを、モデル標的分子(シンコニジン)の存在下でエチレングリコールジメタクリレートと共重合させた。ポリマーを高速液体クロマトグラフィーにより評価したところ、シンコニジンに対する親和性と選択性を示すことがわかった。
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