平成13年度は、リン酸化Maxと非リン酸化Maxのそれぞれについて、化学的組継ぎを適用したNMR試料を調整し、主にアミノ末端側の合成ペプチド領域の情報を含むNMRシグナルを得ることに成功した。 具体的には試料調製を次のように進めた。最初にアミノ末端領域のリン酸化ペプチドおよび非リン酸化ペプチドを化学合成した。このペプチドのアミノ基はt-ブトキシカルボニル基(Boc)で保護してあり、さらにカルボキシ末端をチオエステル化した。次に15Nにより安定同位体標識したカルボキシル末端領域の組換え蛋白質を大腸菌を用いて生産し、この組換え蛋白質のアミノ末端の残基をDixonらの方法によって除去後、さらにBocで保護した。以上のようにして得られた合成ペプチドと組換え蛋白質とを塩化銀存在下で縮合し、TFA処理することで目的のリン酸化および非リン酸化Maxを得た。なお、申請の段階では13C及び15Nの二重標識した組換え蛋白質を使用する予定であったが、現時点では化学結合時の収率が低いため、二重標識試料を必要量用意するにはまだリスクが大きいと判断し、組換え蛋白質部分には15Nによる単一標識のみを施した。また対照実験用として、組換え蛋白質を安定同位体標識していない試料も作成した。 次に作成した蛋白質のNMRスペクトルを測定した。今回は15N同位体フィルターTOCSY及びNOESYスペクトルを測定した。対照実験用試料では合成ペプチド及び組換え蛋白質の両方に由来する多数のプロトンシグナルが生じ、アミノ酸残基の同定は困難であった。一方、組換え蛋白質領域を15N標識した化学的組継ぎ試料では、組替え体由来のアミドプロトンシグナルが大幅に減少し、当初の予想どおりに合成ペプチド領域のアミノ酸残基に由来するプロトンシグナルを選択的に観測できることが明らかとなった。
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