EF-Tuは細菌において構造・機能共に古くから研究されており、tRNAにおいてアクセプターアームとTアームはEF-Tuの認識部位となっていることが知られている。線形動物ミトコンドリアにおいてはEF-Tuとの相互作用に必要と思われるTアームを欠失したtRNAが存在し、その一方でC末端に延長のあるEF-Tuが存在していることが今までにわかっている。本研究ではこれらの認識機構を調べることにより、RNA構造の短縮化が蛋白質によってどのように補われているかを考察することを目的としている。今年度は以下のように、EF-TuによるTアームを欠いたtRNAの認識機構の解明に取り組んだ。 1.Tアームを欠いたtRNAは、人工的に調製した未修飾のものを用いた場合、線形動物ミトコンドリアEF-Tuと結合できないことが観測されている。すなわち天然tRNAに含まれる修飾塩基が必要だと考えられる。ミトコンドリアtRNAは微量成分なので、以後の解析に十分な量を調製することは非常に困難なため、重要だと予想される修飾塩基m^1A9を含んだtRNAを合成した。ここで調製したm^1A9を含むtRNAがEF-Tuに認識されることが分かり、この修飾塩基がEF-Tuによる認識に関わっていることが判明した。また、以後の解析に用いる材料の調製を行ったことになる。 2.エチルニトロソウレアを用いたmodification interference法により、Tアームの欠けたtRNAのどの部分をEF-Tuが認識しているかを解析した。標準的なEF-Tuが結合する部位以外に、tRNAL字構造の内側部分を認識していることが分かり、その部位との結合によりTステムとの相互作用が補われていることが分かった。 3.EF-Tu側の構造を調べるため、C末端側の部分のみを発現させ、NMRの測定を試みた。現在、解析に必要なスペクトルの測定を進めている。
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