本年度は、酵素の再活性化のための実験装置作成および再活性化実験と、酵素活性を高める目的で変異体酵素を作成した。 (1)脱酸素装置の作成 本酵素の活性には活性中心に二価の鉄イオンが必要である。酸素を含む大気下での実験では、この鉄イオンが容易に酸化されるために酵素活性は失われる。このため、活性能を高めることを狙ったいくつかの変異体の酵素活性を評価する場合、各酵素の鉄イオンが完全に二価の状態(活性化状態)になっている必要がある。そこで失活の原因となる酸素を酵素サンプルから取り除く装置を作成した。 (2)不活性酵素の再活性化実験 上記の脱酸素装置を用いて、大気下で精製したPheB酵素に対して再活性化実験を行ったところ、酵素活性が上昇した。現在、不活性化した酵素が全て再活性化できるような条件を検討しているところである。今後得られる再活性化条件を天然型および変異型PheB酵素に用いることにより、正確な酵素活性の比較を行うことが可能となる。 (3)酵素活性を高めることを目的とした変異体酵素の作成 PheB酵素とBphC酵素(PheB酵素と基質特性が異なる)の立体構造を比較したところ、BphC酵素の活性中心には、セリンプロテアーゼの水素リレーと類似した構造を形成していた。この水素リレーの形成は、BphC酵素の活性を高める働きをしていると考えている。一方、PheB酵素には、このような水素リレーを形成する構造を形成していない。そこで、コンピューターグラフィクス上のPheB酵素とBphC酵素の立体構造を照らし合わし、PheB酵素に水素リレーを形成できるような変異体を作成した。現在、(2)の再活性化条件を検討しだい、これら変異体酵素の酵素学的データを測定し、また同時にX線結晶構造解析を行う予定である。
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