ニトリルヒドラターゼはニトリルを水和してアミドにする酵素である。Rhodococcus sp.N-771由来のニトリルヒドラターゼは活性中心に単核非ヘム鉄を有する。本酵素は暗条件、一酸化窒素(NO)存在下で非ヘム鉄にNOが配位することによって不活性化する一方NOの光解離によって光活性化が起こる。また、非ヘム鉄の配位子であるαサブユニットのCystein 112とCystein 114が翻訳後修飾によって、それぞれ、酸素2原子で酸化されたcystein-sulfinic acidと酸素1原子で酸化されたcystein-sulfenic acidとなっていることが質量分析ならびにX線結晶構造解析から明らかになっている。 本年度は、基質アナログの探索に成功した。また、この基質アナログをNO-結合型NHase結晶への導入とX線回折像の撮影、ならびにその構造解析にも成功した。さらに、いくつかの温度および光活性化のタイミングを変えた条件での構造解析も行った。その結果、光活性化に伴う基質アナログのタンパク質内部での移動をX線結晶構造解析の手法で追跡することに成功した。しかしながら、光照射条件の最適化が不十分であったため、基質アナログの移動とNOの光脱離過程が同時に進行しており、十分満足のいく結果とはなっていない。現在、光活性化条件の最適化を行っている。 また、基質であるニトリル化合物については多くの種類を検討したが、現在までに時間分割結晶構造解析に用いることのできる化合物の同定にはいたっていない。引き続き来年度もその探索を行う予定である。
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