研究概要 |
グリシンの生体内での分解反応は4種類のタンパク質(R, H, T, L)からなる超分子複合体(多酵素複合体)であるグリシン開裂系によって触媒され、5種類の補酵素(PLP, FAD, NAD, THF,リポアミド)が関与する。昨年度から開始した本研究は、グリシン開裂系の構成タンパク質さらには超分子複合体の立体構造のX線結晶構造解析を行うことにより、代謝経路全体を原子レベルで解明することを目的としている。本年度は以下の研究成果が得られた。 Pタンパク:Pタンパクは2つのサブユニット(P1およびP2)からなるタンパク質であるが、昨年度は不溶性発現にしか成功していなかった。今回、両方のサブユニットを大腸菌内で共発現させることにより、ネイティブ型と同じ性質をもつ組換えPタンパクを得ることができた。さらにPタンパクの結晶化を行い、最大2.7Åの回折像を測定することに成功した。 Lタンパク:結晶化および回折データ測定を行ない、分子置換法により構造を決定した。Lタンパクは他の生物種由来のものでは2.4Å分解能が最高であったが、今回初めて1.6Å分解能で構造の精密化を行ない、活性部位の微細構造および耐熱化機構についての知見を得ることに成功した。 Hタンパク:結晶化および回折データ測定を行ない、分子置換法により構造を決定することに成功した。その構造をもとにしたホロ型Hタンパクの構造解析を現在行なっている。 Tタンパク:様々な結晶化条件を検索したが結晶は得られなかった。現在、Tタンパク・Hタンパクの複合体での結晶化条件の検索を行なっている。
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