研究概要 |
1 Syk強制発現による細胞・組織レベルでの影響 細胞レベルでSyk過剰発現系を作成し、セリン・スレオニンキナーゼであるgamma-PAKとその活性化因子Cdc42を介するSykの活性化機構について解析を行った。その結果、本年度はPAKがSykの活性を正に制御することと、浸透圧・酸化ストレスを介する経路において両者が会合して相互作用することを見出した。次に酸化ストレスを介するシグナル伝達系路におけるSykの役割として新たにp38 MAPKの活性化を明らかにした(He et al. 2002,Takano et al. 2002)。また新たにSyk自身のユビキチン化も見出した。次年度は非血液免疫系細胞におけるPAK-Syk会合の生理的意義やSykユビキチン化の分子メカニズムについて、特にRING型ユビキチン・リガーゼの関与に焦点を当てて解析を継続する予定である。 2 新規標的分子の同定とその機能解析 幅広い臓器に存在するSykの標的分子として新たにアダプター分子3BP2を見出し、そのSH2領域がマスト細胞の脱顆粒反応をホスホリパーゼCと細胞内カルシウム濃度の調節を介して正に制御することを明らかにした(投稿中)。また3BP2のリン酸化部位を同定し、細胞機能への関わりについて来年度に継続して解析を行っていく予定である。 3 Sykの免疫系における機能解析 非血液免疫系におけるSykの機能解析に先行し、免疫系におけるSykのこれまでの報告をレビューした(Sada et al. 2001,Siraganian et al. 2002)。なお本年度はマスト細胞活性化におけるSykの細胞膜への移行メカニズムについても明らかにした(Sada et al. Blood 2001)。
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