研究概要 |
(1)多彩な機能を有するホスファチジルイノシトール4,5-二リン酸(PIP2)を合成するホスファチジルイノシトール4-リン酸5-キナーゼα(PIP5Kα)の生理機能解析のため、PIP5Kαのノックアウトマウスの作製を行った。まず、129J strain由来マウスES細胞のゲノムライブラリーから、PIP5KαcDNAをプローブとしたプラークハイブリダイゼーション法により、PIP5Kαのゲノムクローンを7種類単離した。シークエンスの結果、PIP5Kαのkinase coreドメイン(18〜399アミノ酸)の5'側に位置する2つのエクソン(24〜67および68〜106アミノ酸)を含むクローンを得ることができた。このDNA断片を用いてターゲティングベクターを構築し、ES(E14)細胞での相同組み換え体を作製した。現在、このES細胞を用いてキメラマウスを作製中である。 (2)pip5kα^<+/->ES細胞を高濃度(2.5〜3mg/ml)G418存在下で培養したところ、染色体の不均一分裂によりpip5kα^<-/->ES細胞を得ることができた。この細胞を用いて増殖、アポトーシス、接着、形態について解析したところ、野生型ES細胞との差は認められず、ES細胞におけるこれらの細胞生理応答にPIP5Kαは関与しないと考えられた。 (3)内在性PIP5Kαを認識する抗体は市販されておらず、入手不可能なため、これのモノクローナル抗体を作製した。得られた抗体は、様々な臓器における内在のPIP5Kαを特異的に認識し、PIP5Kβやγとは交差反応しないことが明らかとなった。
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