「アクチンの協同性の起源」を構造学の観点から明らかにすることを目的として研究を進めた。 平成14年度は、アクチンフィラメント単独及びその結合タンパク質であるミオシンの結合したアクチンフィラメントに関して、クライオ電子顕微鏡法を用いた高分解能像(8オングストローム以上)を解くことを目標とした。その結果、アクチンフィラメントに関して9オングストロームとなり、ほぼ目標を達成した。また、アクチンミオシン硬直複合体に関して14オングストロームを実現した。さらに、8オングストロームを超える領域にも情報をもち、場所によっては、アルファヘリックスを認識できることがわかった。この意味で、目標の8割を達成したと考える。その結果、単独のアクチンフィラメントやミオシンとの結合状態における高分解能原子モデルの構築が可能となり始めている新しいモデルを提唱することが出来た。さらに、アクチンの協同性の起源として、アクチンのinner domainが密度が高く現れないことから、大きな揺らぎのモードを持つことが示唆された。このことが、アクチンの協同性を生み出す可能性がある。 得られた密度マップを使って、原子モデル構築を行うためのソフトウェアを開発した。これにより、低・中分解能の密度マップを使って、原子モデル構築を行うことが可能になると考えている。今後、さらに、アルゴリズムを改良していくことにより、構造変化を伴う、原子モデル構築が可能になると考えている。本内容は、第6回シミュレーション・サイエンス・シンポジウムにて発表した。 また、古細菌シャペロニンCCTは、そのファミリーが真核生物でのアクチンの3次元構造構築に関与している。そこで、電子顕微鏡・分散解析画像処理を適用し、結合ヌクレオチドの違いによる構造変化を検出した。アクチンの構造形成に関わる分子シャペロンの役割を理解する上で重要である。
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