平成13年度は、比較的分子量の小さいGln系のtRNA-ARS複合体について二面角系基準振動モード解析をすすめ、フリー状態と複合体形成状態において低周波数領域の数十個のモードの相関解析を行った。その結果、ARSは複合体形成に伴うダイナミクス変化が小さいのに対してtRNAは大きくダイナミクスが変化することを明らかにし、さらにフリー状態のtRNAにすでに内在している複合体形成状態でのモード運動を同定した。またGlnRSとの結合定数が野生型の30倍であるGln-tRNAアプタマーと野生型のダイナミクスの比較解析を行い、低周波数領域において両者に共通するモード運動と相違がみられたモード運動をそれぞれ明らかにした。これらの成果は、生物物理学会第39回年会(平成13年10月に大阪にて開催)および生体分子ダイナミクス及びプリオン機構研究会(平成14年2月に岡崎にて開催)にて発表した。 また申請者が開発したエネルギー・1次・2次微分の並列計算アルゴリズムをさらに改良し、大幅な性能向上を実現した。この方法は、ユーザが独立に計算可能な単位「サブタスク」の間の依存関係を指定すると、システムが自動的にサブタスクをプロセッサに配置して並列計算を行い、かつ必要なデータ通信を行ってくれるというものである。システムは、遺伝的アルゴリズムを用いて、負荷の分散と通信コストの最適化を同時に満たすようなプロセッサ割り当てを効率的に探索する。これにより、Gln系のtRNAを計算対象として用いた場合、プロセッサ台数が60台のときの並列化効率をこれまでの方法の約9倍にすることができた。これらの成果は、Journal of Computational Chemistry誌に掲載された。
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