(目的)本研究の目的は、タンパク質フォールディングにおける部分的天然構造の役割を理解することである。そのために、α-ラクトアルブミンのD-ヘリックスをウマリゾチームのD-ヘリックスのアミノ酸配列に置換したキメラ蛋白質を作製し、モルテングロビュール状態での非天然構造を天然構造へと変化させる。重水素交換ラベル法と2次元NMR法を組み合わせた方法を用いることによって、キメラタンパク質のフォールディング反応を残基レベルで追跡し、モルテングロビュール状態の部分的天然構造がタンパク質フォールディングにどのような影響をあたえるのか調べる。 (結果)ウシα-ラクトアルブミンのD-ヘリックスのアミノ酸配列をウマリゾチームの配列に置換したキメラタンパク質のcDNAを挿入したpETベクターで大腸菌BL21(23)を形質転換し、^<15>N塩化アンモニウムを含む最小培地で培養した。インクルージョンボデイを8M尿素とメルカプトェタノールを含む緩衝液に溶解しDEAE-Sephadexカラムで粗精製した後、還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンを含む緩衝液に対して透析することによりキメラタンパク質のジスルフィド結合を再形成させた。正しいジスルフィド結合が形成されていることを確認した後、逆相HPLCクロマトグラフィーによってタンパク質を精製した。 マニュアルミキシングによる重水素交換ラベル法によって、重水素交換からの保護率のリフォールディング時間依存性をHSQCスペクトルによって追跡しようと試みた。5℃、カルシウム非結合状態で行うことによりリフォールディング反応が十分遅くなることを期待したが、予想に反してキメラタンパク質のリフォールデイング反応は速かった。このため、この条件でのマニュアルミキシングによる重水素交換ラベルは困難であると判断した。現在リフォールディング速度を十分遅くする条件を検討中である。
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