研究概要 |
1.モジュール・シャッフリングによる新規人工機能性蛋白質の目指す方法論の開発 ミオグロビン(Mb)はモジュールM1からM8の8つのモジュールから構成されている。今回、まず最初のステップとして、ミオグロビンのM1〜M2断片及びM3〜M8断片を作製し、これらモジュール間を連結させる条件を見つけることに成功した。今後は、この手法を用い、ランダムなモジュールのシャッフリングを行い、セレクションにより、新規機能性蛋白質の創製に挑む。 2.ヘムを感知しシグナルカスケードを制御可能な人工蛋白質の設計 最近のゲノムプロジェクトにより、生体内には生命活動に必須の多くのシグナル伝達系が存在していることが明らかになってきた。本研究では、これらシグナルカスケードを人工的に改変する人工蛋白質を創製する手始めとして、構造及び機能解析が進んでいるMbにトリプトファニルtRNA合成酵素(TrpRS)と結合できるグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GapDH)のモジュールを融合することにより、ヘムの有無の有無により、TrpRSとの結合を制御する新規蛋白質の創製を目指した。Mbのアミノ末端にGapDHのモジュールを融合した融合蛋白質は、ヘムと強く結合し、天然Mb同様、酸素が可逆的に配位できる安定なヘム近傍構造を持つことが明らかになった。一方、この融合蛋白質は、天然のGapDH同様、TrpRSと特異的に結合できることも明らかになった。今後、ヘムによるTrpRSの制御について検討し、生体内でのシグナルカスケード制御の可能性を探る。 3.モジュール置換による新規人工機能性蛋白質の創製 ヘモグロビン(Hb)α鎖は、アルツハイマーβアミロイド蛋白質(Aβ40)、TrpRSと相互作用するが、ミオグロビン(Mb)はこれら蛋白質と結合できない。今回、MbのモジュールM6をHbα鎖のモジュールM6で置換したキメラMbをつくったところ、Aβ40及びTrpRSと結合した。このことから、Hbα鎖のモジュールM6がAβ40,TrpRSとの結合部位であることが明らかになった。
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