研究概要 |
進化的には遠いが、相同性を持つ小型タンパク質を用い、構造形成能の解明を目指した。用いたタンパク質は77アミノ酸残基からなるPOIA1(食用キノコヒラタケ由来)と、タンパク質分解酵素Subtilisinの前駆体に含まれるpropeptide(枯草菌由来)の2種であり、相同性はわずか18%である。 まず、POIA1について、溶液中で構造を持ち、一方propeptid単体では構造がないことを、核磁気共鳴(NMR)法で確認した。POIA1について、大腸菌内に遺伝子を組込み培養することで、15N,13Cによる同位体標識を行い、多核多次元NMR法を駆使して、全原子の信号帰属を行い、さらに距離情報を得ることで、立体構造を決定した。この結果、βαββαβというトポロジーを持ち、prppeptideが前駆体の状態で取り得る構造と近いことがわかった。18%の相同性で同一の構造を持つ能力を獲得している一方、残りの82%のために単独では構造を取りえないという2点について、決定した立体構造に基づき解明を試みた。続いて、この2つのタンパク質を断片化し、再構成することで、どの部分が構造形成能に寄与しているかの特定を図っている。構造形成の有無は、タンパク質分解酵素に分解されるかどうかで検出し、効率的なスクリーニング系を確立したところである。 さらに、基本構造であるβシート構造の形成機構、αヘリックス構造の新規検出方法を開発した。
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