本研究は、真核生物において複雑かつ精密に制御されているGTPシクロハイドロレースI(GTPCHI)とGTPCHIフィードバツク制御蛋白質(GFRP)の総分子量400kDaにおよぶ酵素複合体の活性制御機構を、これまでに蓄積された生化学実験結果と合わせ、精度の高い立体構造情報を基盤として原子レベルで詳細を明らかにして構造化学的な議論をするために、高分解能でのX線結晶構造解析を行うことを目的とした。平成13年度は、進行中であった活性型酵素複合体の精密化を終え、その立体構造を原子レベルで明らかにするとともに、構造解析に適した結晶化に成功した不活性型酵素複合体についても位相決定を行い、立体構造解析を始めることが目標であった。 活性型および不活性型酵素複合体の結晶化と構造解析のための予備的な実験については、研究発表の項の1つめに記した論文として発表した。この論文では、活性型および不活性型酵素複合体のそれぞれの結晶は異なる空間群をもち、どちらの結晶格子も非結晶学的な5回回転対称を有することを明らかにした。 活性型酵素複合体のX線結晶構造解析の結果および構造化学的な議論は、研究発表の項の2つめに記した論文として発表した。この論文では、活性型酵素複合体の最初の立体構造解析となるため、複合体を形成する主な要因について考察を行い、GFRPのGTPCHIに対する役割を推論した。また、GFRPの折り畳み(フォールディング)についても新規なベータプロペラ構造モチーフを有することを見い出した。 平成14年度は、不活性型酵素複合体のX線結晶構造解析を終え、酵素反応とフィードバック制御について、より詳細に考察を行う予定である。
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