Arthrobacter Globiformis由来フェニルエチルアミン酸化酵素中のビルトイン補酵素であるトパキノンは、銅イオンと酸素の存在下でその前駆体中のチロシン残基の酸化的修飾によって生成する。この生成機構を解明するため、結晶中でトパキノン生成反応を制御し、反応中間体を低温トラップし、それらの構造決定を試みた。まず、前駆体試料及び沈殿剤溶液を脱気し、嫌気条件下で微量透析法を用い結晶化した。得られた結晶に、脱気した硫酸銅と抗凍結剤であるグリセロールを含んだ溶液を厳密な嫌気条件下で加え、銅イオンが結合した初期中間体を含む結晶を作成した。この結晶を嫌気条件の下で液体CF4を用いて凍結した(結晶1)。次に、この銅結合型の結晶を酸素が飽和した結晶母液に移した後、瞬時に液体窒素温度条件に移した(結晶2)。また、酸素飽和条件下100分経過させた後、同じように反応中間体を低温トラップした(結晶3)。これらの結晶のX線回折強度イメージをSPing8の放射光を用い、BL44XUのOxfordCCD検出器、BL44B2のMAR CCD検出器で記録した。液体窒素温度でX線実験を行ったこれらの結晶は、室温条件で解析した本酵素結晶の結晶学的2回回転軸がわずかにずれ、単位格子の体積が2倍になっていることがわかった。そこで、室温で構造解析した前駆体アポ型酵素の単量体を結晶学的2回回転軸で2量体とした構造を初期モデルとしてこれらの結晶の構造の精密化を進めた。その結果、結晶1は3つのHis残基とTyr残基のOHが銅イオンにテトラヘドラルな配位をしている中間体構造が明らかになった。結晶2では、新たに一つの酵素原子のみがTyr残基に共有結合しているドーパキノンを持つ中間体の構造が決定できた。さらに、結晶3で解析した中間体構造は、トパキノンと同じく3つの0原子がリングに共有結合しており、付加されたO原子の一つが主鎖のO原子と水素結合していることから、トーパであると決定した。
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