研究概要 |
アミノ酸変異による蛋白質の安定性や機能の変化を理論的に解析することが本研究の目的である。このために、分子動力学計算やMonte Carlo計算に基づく自由エネルギー摂動法が多く用いられてきているが、実際に蛋白質と溶媒の膨大な相互作用から高々数kcal/mol程度の自由エネルギー差を計算することは非常に困難である。本研究の第一の目的は、これまで蛋白質折れ畳み研究のために開発されてきた効率のよいサンプリング手法に基づく自由エネルギー計算法を開発することである。 第二の目的は、既存の分子力場ポテンシャル関数(AMBER, OPLSAA, CHARMM, GROMOSなど)を比較することにより、自由エネルギー計算を行う際に最も適したポテンシャル関数を探ることである。第一の目的と第二の目的が共に達成されることにより、統計誤差の少ない、すなわち精度の高い計算が可能となり、アミノ酸変異による蛋白質安定性や機能の変化に関する定量的な解析が可能となる。 本研究では、効率の良い構造サンプリング手法である拡張アンサンブル法の一つであるレプリカ交換自由エネルギー摂動法を用いることにより第一の目的の達成を目指している。これに関しては、すでに理論的な定式化とアラニントリペプチドを用いた予備的な計算が完了したところである。また、第二の目的のために既存の分子力場ポテンシャル関数のインストールが完了し、十数残基の複数のペプチドに関する拡張アンサンブル計算を実行することにより、既存の分子力場関数の比較を行っているところである。
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