トウモロコシの転写因子Dof1は光合成遺伝子などの発現に関わっている重要な植物特異的な転写因子である。過去の研究において、Dof1の活性は光に応答した転写後調節によって制御されていることを示している。そこで、本研究では、どのようにして光はDof1の活性を制御しているか、また、Dof1はどのようにして転写を促進しているのかという、転写因子Dof1による転写調節の分子メカニズムを明らかにすることを目的とした。本年度は、まず、Dof1のタンパク質としての安定性が光シグナルやこれと拮抗するシグナルである糖によって変化しているかを^<35>Sメチオニンを用いたin vivoラベリングによって検討した。しかしながら、そのような変化は確認されなかったので、次に、種々のタンパク質リン酸化酵素の阻害剤やタンパク質脱リン酸化酵素の阻害剤を用いて、タンパク質のリン酸化の関与について検討した。その結果、リン酸化阻害剤K252aは特異的にDof1の活性を促進することが明らかとなった。したがって、Dof1はリン酸化を介して活性が抑制されていることが示唆された。このリン酸化とシグナル応答の関係について、さらに詳細に検討している。一方で、転写促進の分子メカニズムに関しても解析を行った。既に、Dof1のC末端の48個のアミノ酸からなる転写促進ドメインは良く知られたタイプの転写促進ドメインとは類似性は示さいないことを明らかにしていた。しかしながら、今回、このドメインは酵母やヒト由来の培養細胞中でも強い活性を示すことを明らかにし、動植物をとわない共通のメカニズムによりDof1は転写を促進していると判断された。また、この転写促進ドメインに種々の点変異を導入することにより、このドメイン中のトリプトファン残基が活性発現において重要な役割を担っていることを明らかにした。
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