研究概要 |
本年度は、ミトコンドリア間の相互作用にはミトコンドリア同士の融合が必須であることを作業仮説とし、ミトコンドリア融合因子(Fzo:2つのアイソフォームが存在し、それぞれをFzo1,Fzo2とする)がミトコンドリア間相互作用に与える影響について検証した。 まず、ミトコンドリア間相互作用を検証するためモデル細胞として、mtDNAに異なる点突然変異を持ったヒト培養細胞(mtDNA3243番点突然変異とmtDNA4269番点突然変異をそれぞれ導入した2つの細胞株)を樹立し、それぞれの細胞におけるFzo1とFzo2の発現量をRT-PCRによって比較した。その結果、両細胞におけるFzoアイソフォームの発現量に違いは見られなかった。また、突然変異型mtDNAを含まないヒト培養細胞と比較しても、その発現量に大きな違いは見られなかった。これらの結果は、ミトコンドリア呼吸機能の異常に関わらず、細胞内のミトコンドリアは活発に融合していることを示唆している。次に、mtDNA3243番点突然変異とmtDNA4269番点突然変異をそれぞれ導入した2つの細胞株を融合させ、ハイブリット細胞を得た。このハイブリッド細胞の細胞質では、ミトコンドリア融合を介して機能を失っていた遺伝産物を交換できるため、おのおのの突然変異によって消失していた呼吸活性が回復する。この時のミトコンドリアの微細形態を観察すると、ミトコンドリア間で連結した構造が観察された。これは、ミトコンドリアの融合はエンドサイトーシスやエクソサイトーシスのような大規模な膜融合ではなく、連結構造を発達させ、遺伝子産物を交換している可能性を示唆している。 現在、このような構造にFzo1とFzo2が特異的に局在しているか否か、さらに、Fzo1とFzo2をノックダウンしたハイブリッド細胞を作製し、ミトコンドリア呼吸機能の回復を阻害できるか否かを検討している。
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