CD9は膜貫通部位を4カ所もつ分子量27kDの膜蛋白質で、構造的特徴から次々にファミリーを形成する分子が報告されている。われわれはジフテリア毒素受容体の研究から、CD9がインテグリンα3β1や膜結合型細胞増殖因子HB-EGFと細胞膜上でアソシェーションしていることを明らかにしてきた。CD9ファミリーは細胞間の接着に関与する受容体とアソシエートしてその作用を制御することで、細胞問の相互作用に関与していることが予想されるが、そのメカニズムはわかっていない。 そこで、CD9の生体内での機能を明らかにするため、CD9欠損マウスを作製し、解析を行った(第52回大会で発表)。これまでの解析から、CD9欠損マウスは正常に発育したが、CD9欠損雌マウスは重篤な不妊症を示した。また、CD9が卵細胞膜に強く発現していることも明らかになった。そこで体外受精を行ったところ、CD9欠損卵子は、精子の透明体通過や卵細胞膜との接着は正常であるが、精子との膜融合過程に異常があり、受精できなかった。更にCD9欠損卵子の顕微受精の結果、野生型と同様に出生したことから、卵成熟や受精後の発生過程は正常であることがわかった。以上のことから、CD9は精子と卵子の膜融合の過程において重要な機能を果たしていると考えられる。 その後の解析から、CD9と同じファミリー分子であるCD81も卵細胞膜上に発現しており、CD81欠損卵子もCD9と同様に受精過程に異常を示すことが明らかになった。卵細胞膜上でCD81はCD9複合体の一員として機能していることが考えられる。この2つの分子の卵細胞膜上での機能について現在解析を進めている。
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