テトラスパニンは、膜結合型細胞増殖因子や細胞接着分子などの膜蛋白質と複合体を形成し、細胞増殖、分化、創傷治癒、免疫、止血、癌転移などの様々な生命現象に関与していると考えられている膜蛋白質スーパーファミリーである。脊椎動物では、少なくとも21種類、線虫やショウジョウバエではそれ以上の数のテトラスパニンが発見されている。しかし、テトラスパニンは既知のドメイン構造を持たないころから、その生理的機能を推測することは難しく、生体内での役割はほとんど不明であったが、テトラスパニンの一つCD9が受精の膜融合において必須であることを明らかにした。 受精は、生命の始まりとして、多くの生物に共通したメカニズムが存在すると考えられてきた。しかし、哺乳動物では精子と卵子の細胞膜にあるで因子でさえ、ほとんどわかっておらず、解明が遅れている現象の一つである。膜融合は、特に研究が遅れており、分子メカニズムは全くわかっていない。受精を分子レベルで理解することは、避妊や不妊など人類が直面する深刻な問題を解決するためにも急務である。CD9は、細胞接着分子や膜型細胞増殖因子などと細胞膜上で複合体を形成し、細胞接着を介した細胞増殖を制御する膜蛋白質である。卵細胞膜上でも、CD9と結合している因子群が、単独あるいは協同して機能することが予想され、実際に、いくつかの因子を同定し、膜蛋白質だけでなく、細胞内の因子がCD9のC末端に結合することを発見した。更に本研究では、CD9が受精だけでなく、それ以外の膜融合現象にも関わっていることを明らかにすることができた。
|