ミトコンドリア(mit)の外膜に存在するGTPase、FZOは、酵母においてmit同士の融合に関与している。本研究において、FZOの哺乳動物ホモログを同定し、その機能解析を行った。ratの2つのFZO1のcDNA(rat FZO1A、FZO1B)を単離した。これらはお互いに63%の相同性を持っていた。特異的抗体を用いて分布を調べたところどちらもmit外膜に存在しており、また脳ではAが、心臓と精巣ではBが強く発現しており組織特異的な分布をしていた。これらのmit形態調節への関与とその機能分担を調べるため、野生型またはGTPase不活型のFZOをHeLa細胞に発現させたところ、GTPase変異型FZO1Aの発現細胞では通常の長い糸上のmitは観察されずmitの断片化が観察され、一方野生型FZO1B発現細胞ではmit外膜のネットワーク構造が活性化されていた。変異型FZO1Aの発現細胞の電顕観察において、2つのmit外膜が接触しその領域にFZO1蛋白質が濃縮されていたことから、mit融合が阻害されることにより外膜同士が接触した状態で停止していると考えられた。さらにFZO1Bによる外膜の伸張は野生型FZO1Aの共発現によって抑制された。以上の結果から2つのFZO蛋白質は異なる機能を持つことが示唆された。さらにRNAiにより2つのFZOの発現抑制を行った。それぞれの発現抑制によってmit融合活性が強く阻害されることから、両方がmit融合に必須であることが示された。さらにFZO発現抑制細胞のmitはアイソフォーム特異的に異なる形態変化が観察された。これらの結果から2つのFZO1蛋白質は細胞内で協調的にmit形態調節に機能しており、そのバランスによってmit形態が変化しうることが示された。
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