扁平上皮細胞の分化過程におけるCキナーゼη分子種(PKCeta)とp21の相互作用に着目し解析を行った。 終末分化に伴って細胞周期はG1期で停止する。これは、PKCetaがcdk2/cyclinE/p21複合体と結合し、cdk2活性を抑制することによる。このときp21の146番目のSerine残基(S146)がPKCetaによりリン酸化される。S146のリン酸化によってp21はPCNAとの結合能を失う。また、p21はPKCdeltaによってもS146、S153がリン酸化されること、S153のリン酸化によってp21の核局在が阻害されることがわかった。 PKCetaの過剰発現による分化誘導に伴いp21の細胞内局在が核から細胞質に移行すること、タンパク量が減少することが確認された。細胞内でのリン酸化状態はは部位特異的リン酸化抗体(S146-p21)を用いた実験により確認された。また、S146がリン酸化されたp21の局在は細胞質に限定されることがわかった。 S146、S153、及びS146とS153の非リン酸化変異体(A置換型;A mutant)と擬似リン酸化変異体(E置換型;E mutant)のアデノウイルスベクターを作製し、上皮細胞の増殖分化に及ぼす影響、PKCetaとの相互作用について検討した。
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