研究概要 |
エンドサイトーシス後期過程に異常のあるCHO変異株群を用いて、シグナル受容体分子の選別輸送とシグナル伝達応答の連関の解明を目指し、解析を進めた。レトロウイルスベクターを用いた発現クローニングなどの手法により、変異株のひとつ、LEX2株では、コレステロール生合成の後期過程に関わる酵素のひとつ、NAD(P)Hステロイド脱水素酵素様タンパク質(NAD (P)H steroid dehydrogenase-like protein, NSDHL)分子に異常があることにより、細胞内遊離コレステロールレベルが低下し、後期エンドソームでの分子選別に異常が生じていることを突き止めた。そして、(1)後期エンドソーム多胞体からのゴルジ方向への分子選別にコレステロールが必須であること、(2)この分子選別過程に、多胞体構造の再構築が重要な役割をもつと考えられること、を示した。これらの結果からから、NSDHLの活性が、MVBでのインスリン様成長因子2/マンノース6-リン酸受容体などの選別輸送を制御している可能性を示唆した。 NSDHL遺伝子の異常は、先天性の形成異常であるCHILD syndrorne (congenital hem idysplasia-ichthyosiform erythroderm a-lim b defects) の原因となり、コレステロール代謝と発生シグナル制御の関係が注目されている。そこで、以上の成果を基に、細胞内膜系の受容体分子選別輸送調節におけるコレステロール代謝の役割と、その発生シグナル制御などの生理的意味の解明を目的に、LEX2などの変異株にerbB受容体を発現させ、安定に発現するクローンを得た。これらの受容体の機能と、コレステロール代謝異常に関連するエンドソーム系小胞輸送の異常との関連の解析を進めつつある。
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