研究概要 |
出芽酵母のRer1タンパク質(Rer1p)は188アミノ酸からなる膜4回貫通タンパク質で,定常状態において主にゴルジ体シス領域に局在しており,Sec12p, Sec71pなどのさまざまなタイプの小胞体膜タンパク質の膜貫通領域を認識し,ゴルジ体から小胞体へと送り返す分子選別装置として働く.このRer1pの機能を解明するために本年度はまず,緑色蛍光タンパク質(GFP)とRer1pの融合タンパク質(GFP-Rer1p)を利用して,解析を行った.詳細な変異解析の結果,Rer1pのゴルジ体-小胞体間におけるリサイクリングにC末端細胞質領域の2つのリジンおよびチロシン残基が重要であることを明らかにした.また,Rer1pとグルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)との融合タンパク質を酵母細胞内において発現させ,相互作用する因子の解析を行ったところ,Rer1pとCOPI複合体が相互作用していることを見出した.さらに,Rer1pとGSTの融合タンパク質と相互作用する因子について質量分析によって解析したところ,Cdc48Pをはじめとするいくつかの候補が得られた.現在これらについては解析中である.また,Rer1pによる分子認識機構に注目し,Rer1pの膜貫通領域における極性残基について網羅的に変異解析を行った.その結果,152番目のチロシン残基をロイシンに置換したようなRer1p変異体はSec12pの小胞体局在化には異常を示すが,Sec71pの局在化は正常であることが明らかとなった.このことから,Rer1pが小胞体膜タンパク質と相互作用する際には少なくとも2種類のモードがあることが判明した.
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