1.視細胞特異的タンパク質のcDNAクローニングと発現解析:オプシンおよびcGMPホスホジエステラーゼをコードするcDNAをカタユウレイボヤ尾芽胚または幼生からクローニングした。脊椎動物の視物質によく似たタンパク質をコードするCi-opsin1、脊椎動物の網膜色素上皮で発現するRGRに類似のタンパク質をコードするCi-opsin3、cGMPホスホジェステラーゼδサブユニットをコードするCi-PDEδが得られた。各遺伝子の発現パターンを調べ、Ci-opsin1は視細胞で、Ci-opsin3は脳胞と運動神経節で、Ci-PDEδは脳胞内の平衡器に隣接する細胞で、それぞれ特異的に発現することが明らかになった。 2.視細胞特異的遺伝子の転写調節領域の機能解析:カタユウレイボヤ幼生の視細胞で特異的に発現するアレスチンのcDNAが共同研究者により最近クローニングされた。Ci-opsin1とアレスチン、それぞれの遺伝子上流領域をゲノムDNAからPCRより増幅し、クローニングして塩基配列を決定した。各々をGFP遺伝子に連結して、ホヤ胚に導入し、GFP遺伝子の発現を調べた。アレスチンについては視細胞特異的な発現に十分な領域(2.9kb)が得られた。オプシンについては、得られた2.0kbの上流領域では視細胞でのレポーター遺伝子の発現がみられなかったので、現在さらに上流の領域を含むゲノムDNA断片のクローニングを行っている。 3.視細胞特異的な転写調節に関わる転写因子のcDNAクローニング:多くの動物で眼の発生に関与することが知られている転写因子Pax-6のcDNAをクローニングし、完全長の塩基配列を決定した。発現パターンを調べたところ、後期嚢胚期より予定神経索細胞で発現が始まり、発生が進むに従って脳胞でも発現することが明らかになった。
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