1.視細胞特異的遺伝子の転写調節領域の機能解析:カタユウレイボヤの視細胞特異的遺伝子Ci-opsin1およびCi-arrと、近縁種Ciona savignyiのオーソログCs-opsin1およびCs-arrの上流領域間で保存された配列を検索し、いくつかのシス調節配列の候補がみいだされた。上流領域とGFPとの融合遺伝子をホヤ胚に導入し、Ci-arrの上流-2.9kb〜-1.7kbの間に視細胞特異的な発現に関わるシス配列が存在することが示唆された。 2.視細胞特異的な転写調節に関わる因子のcDNAクローニング:眼点の発生に関わる転写因子の候補としてPax-6、Six3/6、Pax-2/5/8のホモログ(Ci-Pax6、Ci-Six3/6、Ci-Pax258a、Ci-Pax258b)をコードするcDNAを単離・同定した。 3.視細胞特異的遺伝子発現に関わる転写調節因子の発現様式の解析:Ci-Pax6、Ci-Six3/6、Ci-Pax258a、Ci-Pax258bの発現パターンをin situハイブリダイゼーション法により解析した。Ci-Six3/6、Ci-Pax258a、Ci-Pax-258bの発現は胚および幼生の眼点ではみられなかった。Ci-Pax6の発現は神経胚および尾芽胚の脳胞の一部と神経索の前方部で、幼生では眼点視細胞付近でみられた。 4.視細胞特異的遺伝子発現に関わる転写調節因子の機能解析:アンチセンス・モルフォリノオリゴ(MO)による特異的遺伝子機能阻害を試みた。Ci-opsin1とCi-arrのMOを卵膜で覆われた受精卵に顕微注入して得られた幼生では、視細胞で各タンパク質が失われていることが抗体を用いて確認された。Ci-opsin1に対するMOを注入した幼生は光に対する反応を示さない。Ci-Pax6に対するMOの導入も行なったが、眼点の発生に異常は認められなかった。
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