本研究の目的は、心筋・血管内皮の前駆細胞を、未分化な状態で単離培養し、両細胞系列の分化制御を明らかにすることを主とした目的としている。これは同時に、組織再生への応用へつながる基礎研究として大きく貢献するものと位置付け出来る。 平成13年度は、実験1)として、「マウス原腸陥入期を中心としたMesp1発現細胞の単離」を試みた。このために、Mesp1遺伝子座にCreリコンビナーゼ(Cre)を導入した作成済みのマウス(P1-creマウス)と、所有するGFP蛍光標識用のリポーターマウスとを交配させ、胎生6.5-7.5日目および心筋・血管内皮が分化した胎生8.5日目(陽性対照)のマウス胚を用いた。その結果、トリプシン酵素処理後のマウス胚由来単離細胞を、フィーダー細胞上でES細胞(胚性幹細胞)用培地中で培養し、GFP蛍光により選別・培養・凍結することができた。なお、この手法とは別に、不測の事態に備え、実験2)として、「分化とともにMesp1発現細胞を持続的に蛍光標識できるES細胞の樹立」を試みた。その結果、Mesp1遺伝子座にCreを導入したES細胞に、GFP蛍光標識用のリポーター遺伝子を導入したstableなcell line(P1Cre-GFP)を作製することができ、またこれを培養・凍結した。このcell lineそのもののGFP蛍光は、Mesp1を未だ発現していないため観察されないが、Creの強制発現実験によりGFP蛍光が観察されることを確認しており、その妥当性については検証済みである。 平成14年度は、得られた単離細胞あるいはES細胞を用いて、実験3)として、「単離された未分化Mesp1発現細胞の分化実験」を試みる。
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