膜移行シグナルを付加した緑色蛍光蛋白(GFP)を発現するウイルスを制作し線条体のプレプロタキキニンB産性細胞に感染させたところ、このニューロンが線条体の他の投射型ニューロンと同じように中型有棘神経細胞であるととが分かった。腹側線条体においてもプレプロタキキニンB産性細胞の分布を調べた結果、全体の約1割ほどの割合で存在しクラスター状に分布していた。特にlateral stripe of striatumとよばれる場所に高い密度で存在していた。また免疫二重染色によって化学的性質を調べたところ、サブスタンスPやダイノルフィンを高い割合で共発現していることが分かった。腹側線条体におけるプレプロタキキニンB産性細胞の存在率と化学的特徴は背側線条体の場合と似ているといえる。腹側線条体の投射型ニューロンは腹側淡蒼球及び黒質に線維を送っていることが知られているが、プレプロタキキニンB産性細胞は腹側淡蒼球の外側部に主として軸索線維を送づていることが分かった。以上のことから腹側線条体においてもプレプロタキキニンB産性細胞が特徴的な一細胞群として存在することが示唆されたといえる。 背側線条体のプレプロタキキニンB産性細胞は無名質という部位に特異的に投射していることが先行研究によって示されたが、その無名質にはニューロキニンB(プレプロタキキニンBから切り出される)の特異的受容体であるNK3を発現する細胞が多く存在する。このNK3産性細胞について化学的性質を調べた結果、同所的に存在するアセチルコリン作動性ニューロンとはほとんど共存しないことが分かった。また、グルタミン作動性ニューロンのマーカーとは良く共存したため、興奮性のニューロンであることが示された。NK3産性細胞は投射型ニューロンであり、その投射先を調べたところ主として大脳皮質の運動関連領域に線維を送っていることが分かった。
|