Iラット脳において、PrRP産生神経細胞の90数パーセントは延髄(孤束核、腹外側網様核)に存在し、その全てが、カテコールアミン産生の律速酵素であるチロシン水酸化酵素(TH)を持つ。しかし投射先におけるPrRP含有神経線維はTH免疫反応性を示す線維と、TH免疫反応性をしめさない神経線維が観察された。分界条床核、視床下部室傍核、室周囲核においては、PrRP免疫反応性のみを示す神経線維と、TH免疫反応性のみを示す神経線維が分布していた。視床下部視索上核、扁桃体では、PrRP免疫反応性のみを示す神経線維と、TH免疫反応性のみを示す神経線維の他に、少数のPrRP、TH両者の免疫反応性を示す神経線維が認められた。視床室傍核においては、PrRP、TH両者の免疫反応性を示す神経線維のみが認められた。PrRP免疫反応性のみを示す神経線維が全て、視床下部に分布するTHを持たないPrRP産生神経細胞由来であるという可能性を排除する実験事実として以下の2点が上げられる。1)分界条床核にけるPrRP含有神経線維のみが分布する領域に逆行性トレーサーを注入すると孤束核、腹外側網様核に位置するPrRP/TH神経細胞にもトレーサーが検出された。2)生後1週間後の脳においては延髄の細胞体においてPrRP/THの共存が既に認められるが、視床下部においてはPrRPがまだ発現していない。この発達段階の脳においても、PrRP免疫反応性のみを示す神経線維が成体脳と同様に認められた。直接的な画像として、孤束核近傍において、PrRP/TH両者の免疫反応性を示す神経突起から、PrRP免疫反応のみ、TH免疫反応のみをしめす突起に分岐する像が得られた。 以上より、延髄PrRP産生神経は細胞体においてはPrRP/THが共存するが、軸索にいてはPrRPのみ、THのみを輸送する軸索に分岐すると推察される。 IIPrRPノックアウトマウスと野生型マウス間で延髄(孤束核、腹外側網様核)におけるTHの免疫反応性、脳内に分布するTH含有神経線維の分布を比較したが、有意な差異は認められなかった。 III PrRPノックアウトマウスと野生型マウス間で、視床下部神経内分泌細胞(バソプレシン、オキシトシン、CRH、ソマトスタチン、TRH、LHRH)の免疫染色性を検討したが、有意な差異は認められなかった。
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