セロトニン作動性イオンチャネル型受容体には、現在までのところ5HT3A、3Bの2つの遺伝子が知られている。しかし他のイオンチャネル型受容体(グルタミン酸、アセチルコリン)とくらべ、ファミリー内の遺伝子数が少なく、未だ同定されていない遺伝子の存在が予想された。そこで5HT3Aのアミノ酸配列からヒトゲノム配列データベースを検索した結果、細胞膜4回貫通型のイオンチャネル型受容体と推定される遺伝子を第17番染色体上に見つけることができた。この遺伝子は、9つのエクソンからなり、5HT3A遺伝子のエクソン構造を高度に保存していた。また、この新規受容体タンパクと5HT3A、3B受容体との類似点として、(1)アミノ末端にシグナルペプチド配列を有する、(2)ジスルフィド結合するシステイン残基の位置が保存されている、(3)第2膜貫通領域にみられるチャネルゲート部分の極性アミノ酸残基が保存されている、の3点が指摘できる。しかしながら、タンパク全体として5HT3Aとの間にたかだか24%のホモロジーしか示さないことから、リガンド未知のイオンチャネル型オーファン受容体と考えられる。現在、当該遺伝子の完全長cDNAのクローニング、発現分布解析のための特異抗体の作製等を遂行中である。今後この受容体に対する特異リガンドの同定ならびにチャネル特性の解析を通して、当該イオンチャネル型受容体の生理機能の解明を行っていく。
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