最近我々は高親和性コリントランスポーター(CHT1)をクローニングすることに成功した。そこでヒトCHT1遺伝子翻訳領域の単一塩基多型を解析した結果、トランスポーターの第3膜貫通領域に位置する89番目のアミノ酸ILeからValへの置換(189V)に対応する多型を見い出した。野生体(WT)と変異体(189V)のCHT1をそれぞれCOS-7細胞に発現させたところ、発現量は同程度であったが189Vによるコリン取り込み速度はWTの40-60%であった。コリンに対する親和性は同程度であった。また我々はラット、サル、ヒトの中枢神経系におけるCHT1の発現分布を抗CHT1抗体を用いて免疫組織化学的に調べた。また前脳基底野初代培養細胞において種々の刺激によるCHT1の局在変化を調べた。高親和性コリントランスポーターの発現分布を調べるためCHT1のC末端に対する抗体を用いてラット中枢神経系における免疫組織化学的観察を行った結果、前脳基底野、線状体、脳幹、脊髄などに陽性の細胞体が観察された。さらに大脳皮質、海馬、線状体、視床、扁桃体、脳幹、脊髄などの神経終末に強いシグナルが観察された。これらの分布はコリン作動性神経のマーカーであるコリンアセチルトランスフェラーゼや小胞アセチルコリントランスポーターの発現分布とよく一致していた。ニホンザル脊髄では細胞体の他に前角や後角などの軸索や終末で異なる強度のシグナルが観察された。これらの結果から高親和性コリントランスポーターCHT1はコリン作動性神経に特異的に発現し、神経終末でアセチルコリン合成に寄与していることが示唆される。またラット胚前脳基底野初代培養細胞を用いてCHT1の局在を調べたところ小胞体や細胞膜などに分布しており、NGF、cAMP刺激などによって細胞膜へ移行した。
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