脊髄小脳失調症6型(SCA6)は本邦に比較的頻度の高い常染色体優性遺伝性脊髄小脳変性症の1型である。本疾患の原因はα1A-カルシウムチャネル遺伝子内の3塩基(CAG)繰り返し配列が異常に伸長することが原因である。我々はこれまで、このSCA6患者では臨床的に純粋な小脳症状を呈し、小脳Purkinje細胞の選択的な脱落を示すことを示した。また、同チャネル蛋白に対する抗体を作製し、免疫組織学的に変異カルシウムチャネルが患者の小脳Purkinje細胞にのみ凝集していることを明らかにしてきた。さらに、CAG繰り返し配列がグルタミン鎖に翻訳されるため、異常伸長ポリグルタミン鎖に対する抗体を用いたところ、患者脳内のやはりPurkinje細胞にのみ、新たな凝集体を形成することを明らかにした。 本年度我々は、患者脳内での蛋白発現を確認するため、先述の抗チャネル蛋白抗体を用いてwestern blotによる蛋白発現を解析した。その結果、患者脳内では確かにα1A-カルシウムチャネル蛋白は発現していることを確認し、さらに細胞脱落を考慮すると、同チャネル蛋白は減少していないことを明らかにした。一方、ポリグルタミン鎖に対する抗体では、異常な蛋白は検出されず、他のポリグルタミン病とは異なり、明らかなポリグルタミン鎖蛋白の凝集はないものと考えられた。 さらにwestern blotでは患者脳で発現する特異的な蛋白分子種は確認できなかったため、変異α1A-カルシウムチャネル蛋白に結合する新規蛋白分子を同定する目的で、bacteriaによるtwo-hybridシステムを準備した。現在この手法により、解析を進めている。また、新たな特異抗体を作製し、これらを用いてwestern blotを行う方針である。
|