パーキンソン病は黒質ドーパミン作動性神経細胞の欠落を特徴とする神経変性疾患である。本疾患は大部分が孤発性であるが5〜10%は遺伝性の形態をとり、その原因遺伝子を解析することがこの研究の端緒となっている。常染色体劣性若年性パーキンソン病(AR-JP)の原因遺伝子産物Parkinは、ユビキチン-プロテアソーム経路のユビキチンリガーゼとしての活性をもち、パーキンソン病タイプの変異体にはこの活性がない。 我々はParkinの基質として、ドーパミン神経細胞に豊富に発現する膜タンパク質パエル受容体を同定した。パエル受容体を神経系培養細胞内で過剰発現させると、折り畳みに失敗し不溶化したパエル受容体が小胞体内に蓄積し、細胞死が観察された。野生型のParkinを遺伝子導入すると異常な折り畳みのパエル受容体の分解が促進されるとともに、細胞死も抑制された。以上の結果より、Parkinが異常な折り畳みのパエル受容体を基質として分解することにより、ドーパミン神経細胞死を防いでいるという仮説を立てることができた。 さらにParkinの機能制御機構を明らかにするために、Parkinと相互作用する分子Hsp70とCHIPを生化学的に同定した。CHIPは、試験管内でParkinのユビキチンリガーゼとしての活性を促進する働きを示した。一方、Hsp70は細胞内でパエル受容体が不溶化することを抑制し、ParkinとCHIPによるユビキチン化反応およびプロテアソームによる分解を促進するように働いた。これらParkin結合分子は、折り畳み異常パエル受容体の細胞内への蓄積を協調的に抑制することが明らかとなった。
|