研究概要 |
ポリグルタミン病は遺伝子産物内のポリグルタミンが異常に伸長することによって引き起こされる神経変性疾患である。ポリグルタミン鎖の構造的特徴、蛋白質部分への影響を明らかにするため、不溶性のポリグルタミン鎖を水溶性が高く、極めて安定なマッコウクジラミオグロビンへ挿入した変異体を分子設計した。12、28(正常型)35、50(異常型)のポリグルタミン鎖を挿入したミオグロビン変異体を大腸菌中で発現、精製し、その構造をNMRやIRなどの分光学的手法から検討した。グルタミンリピートが異常伸長するとβシート構造をとり、蛋白質が部分的にUnfoldingすることで凝集しやすくなることを各種分光学的手法により明らかにした(Tanaka et al., J.Biol.Chem.,2001)。また、異常に伸長したグルタミンリピートをもつミオグロビン変異体の凝集体形成の機構を明らかにするため、Spring 8の放射光を用いたX線小角散乱法による実験と電子顕微鏡による観察を行った。その結果、グルタミンリピートが異常伸長することで、ある特定の大きさをもつオリゴマー(中間体)が形成され、それが連なりアミロイド繊維の形成へ至ることが明らかとなった(論文投稿中)。 さらに、ポリグルタミン以外の様々な凝集性アミノ酸配列(プリオン病やパーキンソン病に関わる)を挿入した変異型ミオグロビンの発現、精製にも最近成功し、その構造解析をCD, IR, NMRなどの分光学的手法を用いて行った(論文投稿中)。その結果、凝集性アミノ酸配列だけで、アミロイド繊維の形成など、病気を引き起こす本来の蛋白質の特性をかなり再現できることが判明した。
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