研究概要 |
コリンアセチル転移酵素(ChAT)およびシナプス小胞アセチルコリントランスポーター(VAChT)の発現制御領域を含む約12kbのヒトの遺伝子断片を用い、VAChTの翻訳領域をP1 Bacteriophage Cre Recombinaseで置き換えたコンストラクトを作製した。これをC57BL/6マウス受精卵前核にマイクロインジェクションし、遺伝子導入が確認された個体(CAT-Creマウス)10匹を得た。Creマウスの機能検定をおこなうため、上記ChAT-CreマウスとCreによる組み換え後にβ-galactosidase(LacZ)を発現するマウス(CAG-CAT-Z ; Araki et al. PNAS(1995)92,160)との掛け合わせを行った。 CAG-CAT-Zマウスは通常はプロモーターからstuffer遺伝子(CAT : chloramphenicol acetyltransferase)のみが転写され、LacZの発現は完全に抑制されているが、Creによる組み換えによりstuffer遺伝子がループアウトされLacZの発現が強力に誘導される。現在までに、3匹の機能検定(研究の計画・方法の項参照)を行ったが、未だ満足できる結果は得られていない。すなわち、総じてCre発現のコリン作動性ニューロン特異性は認められるものの、(1)コリン作動性ニューロン以外にも異所性の発現が見られるものや、(2)コリン作動性ニューロンのうちの一部だけに発現が限局している(脊髄前角の運動ニューロンのうちの半分でのみ発現が認められる)などであった。現在、残りの7匹についての機能解析を鋭意続行中である。
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