平成14年度は局所レーザー光分解(FLIP)と全反射照明(TIRF)法の二目的を両立した正倒両立式蛍光顕微鏡法を用いて、1)神経細胞の細胞膜領域に限局したカルシウム応答をの検出、2)単一グルタミン酸イオンチャネルにおけるカルシウムイオン流入の同定を行なった。 海馬神経細胞におけるグルタミン酸依存性Ca応答の領域を限局させるために、負荷するCa蛍光プローブの用量を低下させ、阻害剤を用いて他の(二次的な)Ca信号をできるだけ抑制することを試みた。3種の阻害剤、すなわちNMDA型受容体阻害剤であるMK-801(10μM)、膜電位依存性Caチャネル阻害剤であるニフェジピン(10μM)そして細胞膜透過型のCaキレート剤であるBAPTA-AM(20μM)を処置するとケージドグルタミン酸(1mM)のFLIPにより誘導されるCa依存性Rhod2蛍光は著しく阻害された。TIRF法で蛍光検出を細胞膜領域に限定するとグルタミン酸刺激直後において、グルタミン酸の投与領域(直径約3ミクロンの範囲)周辺に集中した蛍光強度の増大が検出された。蛍光強度はグルタミン酸投与後12msでピークに達し、この時平均直径約0.5ミクロンのスポットとして観察された。スポットは一度のグルタミン酸刺激で、9μm平方あたり平均で3〜10個ほど出現し、出現から20ms後にはほとんどが消滅した。スポットの直径は消失まで大きく変化しなかった。グルタミン酸刺激依存性で出現するCa依存性Rhod2スポットの数は、グルタミン酸の投与範囲や投与用量に依存して変化した。以上の結果から、グルタミン酸刺激依存性で出現したスポットはCaイオンの結合により活性化した単一のRhod2蛍光分子であると結論された。スポットはTIRF法でのみ観察されたことから、Rhod2蛍光分子がガラス面(細胞接着面)に近づいたときに検出されたと考えられ、カルシウムチャネルが開いてカルシウムイオンが細胞内に入ってRhod2と結合した瞬間をとらえた可能性が高い。
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