研究概要 |
(1)コヒーレンス解析による脳領域間の機能的結合の解明 従来のコヒーレンス解析では相関性の強弱しか知ることはできなかったが、新しく自己相関モデルを応用するアルゴリズムを用いることで、相関性の強度と同時にその情報伝達の方向性を知る解析を開発した。この手法によって、大脳皮質運動野による筋放電の統御が特定の周波数帯域(ベータ域)では、皮質から筋活動へ一方的な情報のフローによって担われていることを解明した(Mima et al.,2001)。 難治性てんかん患者の術前検索の一環として行われた硬膜下記録脳波のコヒーレンス解析によって、運動の直前に一次感覚運動野と補足運動野との間の機能的連関が一時的に増強することを発見した。これは、複数の運動野を結ぶネットワークの結合性の変化が、運動統御に重要な役割を果たすことを示唆する(Ohara et al.,2001)。 また、視覚情報の統合と脳活動の同期化の関連を解明するため、左右の両視野にまたがる描画の視覚的認知課題遂行中の半球間コヒーレンスを検討した。その結果、有意味な描画(日常的物体)の認知でのみその増大を認めた。これは両半球の情報統合による認知がコヒーレンスと密接に関連することを示唆する(Mima et al.,2001)。 (2)経皮的磁気刺激(TMS)による脳機能の可塑的変化の誘導 脳機能の可塑的変化を非侵襲的に生み出す目的で、低頻度磁気刺激法を用いた検討を行った。一次体性感覚運動野を低頻度磁気刺激することで、その直後から一過性に体性感覚閾値が上昇することを発見した(投稿準備中)。非侵襲的に脳機能の可塑的変化をもたらす手法は慢性疼痛の治療などに応用できる可能性がある。
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