研究概要 |
ベンゾジアゼピン系薬物の一種であるミダゾラムを用いた実験において,海馬スライス標本での細胞内記録により,抑制性シナプス後電位増強作用にラット海馬内で領域差が存在する事が報告されている.本研究では,研究代表者はミダゾラムの作用の領域差から強く存在が推測される海馬CA1,歯状回両領域間における抑制性シナプス伝達の生理学的性質の相違性に注目し,電気生理学的・薬理学的解析を行った.約2-4週齢のWistarラットより作製した海馬スライス標本(400μm)にパッチクランプ法を適用し,CA1-錐体細胞(CA1-PC),歯状回-顆粒細胞(DG-GC)における抑制性シナプス後電流(IPSC)を膜電位固定下で測定した.IPSCは興奮性シナプス伝達を薬理学的に除去した上で,記録細胞の近傍の介在ニューロンを双極電極で電気刺激(0.1-0.5mA,150μs)することにより記録された.そしてミダゾラム(0.3,1,10,75μM)の細胞外投与に対するIPSCの振幅の変化を記録した.その結果,ミダゾラム(1,10,75μM)はCA1-PCでのIPSCの振幅を増大させたが,DG-GCでのIPSCをわずかに減少させた.これらの結果から,海馬CA1,DG両領域の抑制性シナプス伝達様式の相違性を示し,両領域間においてGABA_A受容体の異なるサブタイプが存在することが示唆された. 本研究結果については第78回日本生理学会大会(京都),第24回日本神経科学・第44回日本神経化学合同大会(京都),第81回北海道医学大会生理系分科会(札幌),Society for Neuroscience 31st Annual Meeting (San Diego)において報告した.
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