ラットのゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)ニューロンは、主に内側視索前野(POA)領域に分布することが知られている。GnRHニューロンにおけるGABAの反応性は生後興奮性から抑制性に変化するとの報告があり、KCCトランスポーターの発現変化がGABAのGnRHニューロンにおける反応性変化と密接に関連していると考えられている。KCC1とKCC2の塩基配列はラットで報告されているが、近年マウスではKCC3とKCC4の存在も報告され、ラットにも機能的な4種類のKCCトランスポーターが存在していると考えられる。そこで今回、KCC1とKCC2のみならず、マウスでクローニングされたKCC3とKCC4の塩基配列を元にプライマーの設計を行った。様々な日齢の雄性ラット(1日齢、7日齢、30日齢、90日齢)を用いてPOA領域を切り出してRNAを抽出し、KCCトランスポーターのmRNA存在の有無と生後発達変化についてRT-PCR法を用いて解析した。その結果、KCC1mRNAは7日齢に僅かな発現が見られたが、その他の日齢ではほとんど確認されなかった。また、KCC2はいづれの日齢でも十分量の存在が確認され、特に1日齢から7日齢にかけて顕著な発現増加が確認された。また今回はじめて、ラットPOA内にKCC3とKCC4のmRNAの存在を確認し、PCRによる増幅に成功した塩基配列については現在解析中である。KCC3の発現も1日齢から7日齢にかけて発現量の増加が見られたが、KCC4のmRNAの顕著な生後発達変化は見られなかった。 以上より、雄ラットのGnRHニューロンにおけるGABAの反応性の生後発達変化には、1日齢から7日齢にかけて起こるKCC2とKCC3の発現増加が関与している可能性が示唆された。
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