平成13年度は、滑動性追跡眼球運動のinitial pursuitの部分と、前頭葉大脳皮質との関わりを調べることを目的とした。用いたニホンザルにおいては、頭部固定用プラットホームの形成手術、眼球運動測定用サーチコイルの眼窩への導入手術、さらに大脳皮質細胞の電気的活動記録用および微小電気刺激用の電極を装着するためのチェンバーをプラットホームに設置する手術を、それぞれ全身麻酔下にて無菌的におこなった。またステップランプ状に上下左右4方向に動く視標を追視させることにより、滑動性追跡眼球運動のトレーニングをおこなった。トレーニング終了後、微小電気刺激を行って眼球運動が誘発される領域のマッピングを行い、前頭眼野を同定した。同定した前頭眼野にGABA_Aレセプターアゴニストのムシモールを注入すると、滑動性追跡眼球運動のinitial pursuitの可逆的な抑制が、上下左右4方向すべての眼球運動において観察された。 視標の動きに外乱を与え網膜誤差を生じさせると、網膜誤差を減少させるように眼球運動の特性が変化することが知られている。この特性変化は眼球運動の適応として知られ、運動学習モデルと考えられている。滑動性追跡眼球運動においても適応がおこることが既に報告されている。 そこでムシモールの前頭眼野への注入による、滑動性追跡眼球運動の適応に対する効果についても調べてみた。その結果、注入側の同側に向かう滑動性追跡眼球運動については、速度の低下がみられたが適応への効果は観察されなかった。
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