研究概要 |
1)胎生期ストレス負荷ラットの作製:受精後10日目(E10)の妊娠ラットを入れた飼育用ケージを,反復寒冷ストレス装置(現有)内に設置し,出生予定日(E21)の2日前(E19)まで同装置内で飼育することにより,胎生期ストレス負荷ラットを作製した。対照ラットとして,ストレス非負荷妊娠ラットから出生したラットを用いた。 2)胎生期ストレス負荷ラットにおける大脳辺縁系発達の解剖学的検索:生後8日目(P8)のラットの脳および末梢臓器(胸腺,脾臓,副腎,肝臓,腎臓,心臓)の湿重量,体重を胎生期ストレス負荷群と対照群で比較した。その結果、ストレス負荷群では対照群に比べ,脳,胸腺,脾臓,および腎臓の絶対湿重量と体重が有意に小さかった。また,体重当たりの相対値で比較すると、胎生期ストレス負荷群では,胸腺の相対値が有意に低く,逆に肝臓の相対値が高かった。さらにP8ラットの脳組織ニッスル染色標本を作製し,大脳辺縁系の各領域の発達程度を比較する目的で,前部帯状回皮質の面積を比較解析した。脳梁の最も吻側部レベルの前額断における前部帯状回皮質の面積は,胎生期ストレス負荷群で有意に小さかった。 3)生後初期における運動機能の発達に対する胎生期ストレスの影響:生後1-14日までのラットを用いた。四肢の協調運動の発達を観察するために,傾斜版テスト(25度の斜面にラット頭部を下向きにして置き,ラット頭部が上向きになるまでの時間を測定),および遊泳テスト(37℃の温水中にラットを放し遊泳行動を観察)を行い,各群の動物における運動発達特性を比較した。その結果,胎生期ストレス負荷群は対照群と比較して,傾斜板テストでの体軸回旋の潜時が有意に長かった。また,遊泳テストでは,前後肢の協調運動性や前後肢の体幹への引き寄せが発現する時期の遅延が見られた。 以上より,胎生期ストレス負荷により,出生後の末梢臓器の発達,大脳辺縁系の解剖学的発達および運動機能の発達が障害されることが明らかになった。
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