網膜アマクリン細胞でみられるTTX感受性Na電流の解析を行い、活動電位と持続的脱分極のTTX感受性、および、活動電位の樹状突起への広がりについて検討を行った。標本として、ラット培養アマクリン細胞を用い、パッチクランプ法による電気生理学的な記録を行った。 (1)アマクリン細胞には、TTX感受性電流として、一過性Na電流と持続的Na電流があった。一過性Na電流は活動電位の発生に寄与し、持続的Na電流は、持続的脱分極の増幅に寄与していた。持続的Na電流は、一過性Na電流よりも過分極側で活性化され、活動電位発生の閾値以下で持続的脱分極の増幅に関与していた。 (2)アマクリン細胞の細胞体と樹状突起に二本同時パッチクランプ法を適用したところ、樹状突起への活動電位の広がりには、TTX感受性Na電流が寄与し、自己再生的に伝導していくことが分かった。こうした樹状突起への自己再生的な活動電位の伝導により、樹状突起からのシナプス出力が制御されていることが示唆された。 (3)樹状突起への活動電位の伝導は、樹状突起へのGABA入力によって抑制された。これはGABA入力によって樹状突起の電位が限局的に過分極したためであると考えられた。 アマクリン細胞の樹状突起に活動電位が伝導することにより、シナプス出力が制御されていることが示唆された。こうしたアマクリン細胞からの抑制性出力により、神経節細胞でみられる側抑制や動きの検出といった視覚情報の特徴抽出が動的に修飾されていると考えられた。
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