本研究では、脳マラリアの発症に関与する宿主遺伝子をクローニングしその機能を解析することを最終目的として、まず脳マラリア感受性のCBAと抵抗性のDBA/2系統聞の交雑群を用いてPlasmodium berghei ANKAの感染実験を行い、脳マラリアの発症に関与する遺伝子の存在領域の特定することを本年度の目的とした。これまでの予備実験により、ネズミマラリア原虫(P.berghi ANKA)に感染した場合、CBA系統はすべての個体が2週間以内に脳マラリアを発症して死亡するのに対し、DBA/2系統の個体は感染しても脳マラリアを全く発症せず、しかも感染後3週間以内には死亡しない。そこで、CBA系統とDBA/2系統から約175匹の交雑群を作成し、あらかじめ尾端よりDMAを抽出しておいた8週齢の雄個体に、P.berghi ANKAを1個体あたり5x1^6個感染させて、マラリア原虫感染3週後の生死(死亡個体については、感染後の生存日数を調査)測定した。全染色体についてCBA系統をDBA/2系統間で多型を示すマーカーのスクリーニングを行い、全ゲノム領域について約40cM間隔で約40個のマイクロサテライト(Mit)マーカーを設定した。感染後2週以内に死亡した約50個体について、設定したMItマーカーの遺伝子型をPCR-SSCP法を用いて判定した。遺伝子型の分離比はX^2検定を用いて期待分離比(1:1)より有意に分離比が偏っているマーカーを調査した。その結果、マウス第14番染色体(Chr.14)とマウス第17番染色体(Chr.17)に分離比が極端に偏っているマーカー(P<0.01)が存在していることを見出した。したがって、これらの染色体上にはCBA系統に由来する脳マラリア感受性遺伝子が存在する可能性が示唆された。
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