近年、数多くのHelicobacterが実験用小動物の消化管内から分離されているが、感染宿主に対する病原性が不明なものが殆どである。そこで今回、病原性不明のHelicobacterの感染宿主に対する病原性を明らかにすることを計画した。 平成13年度はH.typhlonicusとH.cinaediの2菌種の病原性を感染実験により検討した。感染実験は各菌をBALB/cAマウスと免疫不全マウスであるBALB/cA-scidマウスに感染させ、感染4、8、12、16、20、24週後に剖検、採材を行い、菌分離(肝臓、盲腸)と病理組織学的検索(肝臓、胃、小腸、大腸、脾臓、膵臓)を実施した。 感染実験の結果、H.typhlonicus感染群ではBALB/cAマウスとBALB/cA-scidマウスで、H.cinaedi感染群ではBALB/cA-scidマウスのみで肝病変が高頻度に見られた。感染群マウスに見られた肝病変はいずれも肉眼的に肝臓表面に微小白斑が散在し、病巣部の組織像は炎症性細胞浸潤を伴う巣状壊死の病像を呈していた。また、両群のBALB/cA-scidマウスにおいて腸粘膜上皮の過形成粘膜固有層における炎症性細胞浸潤を伴う大腸炎が盲腸と結腸を中心に見られた。 本研究により、これまでに報告されているH.hepaticus、H.bilisに加えて、H.typhlonicusとH.cinaediもマウスに肝炎や大腸炎を引き起こすことが明らかとなった。
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