研究概要 |
クローンマウスを作出するためのドナー細胞であるES細胞の個体への発生能を予め調べることは、クローンマウスを作出する上で重要である。そこで、今期はB6CBF1マウス由来ES細胞であるTT2株に変異oviduct-specific glycoprotein gene (OGP)を導入した4つのsnbline(B16,B133,3-47およびA-27)からのクローンマウスへの発生能を検討した。繊維芽細胞からのクローンマウスの作出と同様にして培養シャーレに直接ES細胞を播種し、M期に細胞周期を調整したものを核移植のドナーとしてクローンマウスの作出を行った。その結果、不活化HVJによるB16、B133、3-47およびA-27の除核未受精卵との融合率は、65.2%(1257/1927)、64.4%(343/533)、63.1%(401/636)および36.6%(190/519)であり、Sr^<2+>による融合卵の正常活性化(1前核1極体)率は78.8%(990/1257)、72.9%(250/343)、79.1%(317/401)および66.8%(127/190)であった。それらを培養したところ胚盤胞への発生率(胚盤胞数/培養数)は、57.5%(565/983)、59.8%(149/249)、48.6%(154/317)および66.9%(85/127)であった。最終的なクローンマウスの作出率(クローンマウス/培養胚数)は、2.0%(20/983)、0%(0/249)、0.6%(2/317)および1.6%(2/127)であり、個体を得ることができないsublineもあった。このように同一の遺伝的バックグラウンドを持ち、さらに同じ遺伝子操作をしたsubline間で個体への発生能が異なることがわかった。このことは今後クローンマウスの作出を検討する上で、一つのsublineのみを用いることの危険性を有することを示唆している。 今後は実験動物学上重要と考えられるC57BL/6Jマウスから樹立したES細胞からクローンマウスの作出を検討するとともにキメラマウスの作出、分化誘導したES細胞からのクローンマウスの作出および核型のチェックを行っていく。
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