ヒト及びラットAttractin(Atrn)遺伝子は、alternative splicingにより、膜型と分泌型のアトラクチンをコードしている。膜型と分泌型はそのC末のみが異なる。Atrn変異zitterラットの研究から、膜型アトラクチンは中枢神経系のミエリン形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなっている。本研究では、膜型アトラクチンのミエリン形成における役割をより詳細に検討するために、膜型アトラクチンを発現している細胞の種類・細胞内分布を特定する。今年度は、組み換えアトラクチンを発現する細胞株の樹立とペプチドを抗原とした抗アトラクチン抗体の作製を目的とした。 ・組み換えアトラクチンを発現する細胞株の樹立 ラット分泌型、膜型型の全コーディング配列をそれぞれ、pEBVHisベクター(Invitrogen)にクローニングし、コンストラクトを作製した。各コンストラクトをヒト腎臓細胞株293-EBNAにトランスフェクトし、形質転換した細胞をクローニングした。各細胞株におけるAtrnのmRNA発現量をRT-PCRで検討し、組み換え分泌型アトラクチンを発現する細胞株を3株、膜型アトラクチンを発現する細胞株を4株樹立した。 ・ペプチドを抗原とした抗アトラクチン抗体の作製 ラット膜型アトラクチンのN末、中央部、C末に由来するペプチドを抗原としてウサギに免疫した。得られた抗体を用いて、本研究で樹立した細胞株の抽出タンパクに対するウエスタン・ブロット解析を行った。その結果、N末、中央部からの抗体は、分泌型・膜型アトラクチンを、C末の抗体は膜型アトラクチンのみを認識し、今後の研究に利用可能であることが判明した。 来年度は、抗膜型アトラクチン抗体を用いた免疫組織学的解析を行い、ラット脳における膜型アトラクチンの存在部位を同定する。
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