近年、次世代の医療技術として、事故や病気で失った組織や臓器を自己の細胞を使って、体内や体外で再生させることを目指す再生医療が注目されている。再生医療の推進のためには、細胞増殖のための適切な足場や増殖因子の提供のみならず、特定の細胞を選択的に分離回収する技術が重要である。本研究では、ポリ(ε-カプロラクトン)やポリ(3-ヒドロキシブチレート)と両親媒性ポリアクリルアミドを重量比10:1で混合したクロロホルム溶液(1〜10g/l)を高湿度下でガラス基板上に5〜20mlキャストした。キャスト溶液蒸発後、表面に干渉色を有する多孔質フィルムが作製できた。光学顕微鏡・電子顕微鏡により膜の構造解析を行った。その結果、溶液界面の直接観察により、多孔性膜は六方細密パッキングした微小水滴を鋳型としていることが分かった。レーザー光散乱の結果、10次以上の回折光がフィルムの全面で観測されたことから、規則性の極めて高い孔形状を有していることが分かった。キャスト溶媒の種類、量、濃度などの条件により微小水滴径を変化させることで、孔径は1〜80μm、膜厚は0.5〜50μmの範囲で制御できた。また、孔貫通型の多孔質膜(孔径6および9μm)を自作のモジュールに組み込み、人血液の分離実験を行ったところ、効率よく白血球を分離でき、血小板と赤血球が回収できることが分かった。血液細胞の活性化について検討するために、凝固活性能を調べたところ、膜表面の親水性や電荷特性によりブラジキニンの産生能が異なることが分かった。
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