研究概要 |
本年度は超音波モータを使用した人工心臓システムの構築の基礎的研究として,1)超音波モータの基本特性の調査およびいくつかのデザインの検討,2)心房の吸着防止を含む循環制御アルゴリズムの構築,3)供給電力およびモータ回転数による差圧.流量推定アルゴリズムの構築の3つを行った. 一般的な心臓の一回拍出量は約70mLであるが,体内にポンプを埋め込むために,ポンプサイズとアクチュエータのサイズを小型化しなければならない.そのため本研究では,一回の拍出量を少なくし、その分高い心拍数で駆動するように設計した. 高い心拍数でポンプを駆動した場合,その流速波形は定常流のそれに近づく.このようなポンプの場合,しばしば脱血カニューレが心房壁に吸着することが知られており,人工心臓の流量制御を困難にしている.そこで,左心は体循環の制御を行い,右心において吸着を防止するような制御アルゴリズムの開発をおこない,定常流型ポンプを取り付けたモック循環系および山羊を用いた急性動物実験を行い,その制御特性を検討した.その結果,本制御法によって,吸着を防止しつつ左心における循環制御を行えることが示された.しかし,制御パラメータの値によっては断続的な吸着や右心流量の過剰な増加などの不具合も明らかとなった. 差圧・流量推定アルゴリズムは,ポンプ特性を基にしたモデルと経時的に変化すると考えられる血液粘性等を補償するために導入された時変モデルの2つのARXモデルで構成される.本アルゴリズムをモック循環系および山羊を用いた急性動物実験によって得られたデータに対して適用した結果,平均推定誤差は差圧に関して,約6mmHg,流量に関して約0.5L/minであり,比較的制度よく推定を行うことができた.
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